研究概要 |
構造を把握しやすい微小な岩石供試体(約5x7xlmm以下)を用いた顕微鏡下での材料試験(マイクロメカニックス試験)を実施し,これまでに供試体の構成結晶の形状や先在き裂の分布が,破壊強度や破壊形態に影響を及ぼすことを明らかにした。本研究では,花崗岩の微小供試体114個について,温度環境(常温から200℃まで)を変えた試験を実施し,先在き裂と温度環境が破壊過程に及ぼす影響を調べた。また,AE(Acoustic Emission:破壊音)計測と有限要素法によるシミュレーションも実施した。その結果, 1.常温に比較して,50℃,100℃,200℃と環境温度が高くなると強度低下が進み,200℃では強度の異方性が見られなくなった。熱応力の影響に依ることを確認した。しかし,載荷軸に垂直な先在き裂を多く含む供試体では,温度以上に先在き裂の本数が強度に影響を及ぼしていることがわかった。 2.有限要素法による,熱環境下の破壊シミュレーションを行った結果,黒雲母の境界線の込み入った箇所に応力集中が起こり,き裂進展の切欠になる可能性が見いだされた。 3.引張破壊に至る過程で,多くのAEを検出することができた。 以上のこれまでの実験結果から,花崗岩の熱環境下における引張破壊過程は,載荷軸に垂直な先在き裂が多い供試体とそれ以外の供試体に分けて考える必要がある。 載荷軸に垂直な先在き裂が多い供試体においては,熱応力の影響以上に先在き裂の影響が大きく,先在き裂の一つが選択的に進展し,破断に至る。 一方,それ以外の供試体では勇断滑りが先行し,そこから先在き裂や結晶塊界の破断に進展する。その際には多くのAEを発生し,熱応力の影響を受けやすいと考えられる。特に,黒雲母を含む結晶境界の複雑な箇所に応力集中が生じ,熱応力と相俟って破壊進展の核をなすと推察される。
|