研究概要 |
地球温暖化現象の解決策の一つとして,日本国内における二酸化炭素埋設処理技術を開発するための基礎的データを得る目的で以下の研究を実施した。 (1)液化二酸化炭素と海水の高圧反応実験を行った。Barnes型熱水反応装置に液化二酸化炭素及び岩石(花高閃緑岩)と淡水(地下水)を封入し,約100気圧下で150℃に加熱して反応させて高圧下で経時的にサンプリングを行った。採水試料を原子吸光,ICP-MS,イオンクロマト等で分析し,反応前後の岩石構造および鉱物組成の変化をX線,電子顕微鏡,EPMA等で分析した。分析の結果は,反応の進行とともにカルシウムイオンは急激に減少し,溶存二酸化炭素との反応によって炭酸カルシウムが析出したことを示した。このことは,高圧下で二酸化炭素を地中処理することにより,二酸化炭素を地中に固定できる可能性が示している。 (2)さらに,実験データの解析結果をフィールドにおける二酸化炭素深地層注入試験の結果と総合して比較した。秋田県雄勝の花崗岩閃緑岩地熱地帯において約1000mのボーリング孔中に二酸化炭素を投入して水質変化を観測した。これらのフィールド試験の結果は,本実験の結果と良い一致を見た。 (3)二酸化炭素の溶存が海水組成に及ぼす影響を実験的に検討する目的で,海水が溶存炭酸イオン'と反応する過程及び海水から析出する沈殿物の解析を行った。海水中の炭酸イオン濃度の増加とともに,比較的炭酸イオン濃度の低い状態ではdolomiteが,Caイオンが消失するような高濃度の条件下ではMg-rich dolomiteが析出するなど海水組成への影響が明らかとなった。 これらの研究成果は,今後の高温岩体や海底における二酸化炭素処理方法を検討するための有用な基礎データとなる。研究結果は深海底や海底下の水一岩石相互作用に密接に関連しており,二酸化炭素の地下埋設に伴う微生物活動への影響等を含めて総合的にまとめを行う予定である。
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