研究概要 |
本研究は二酸化炭素(CO_2)の臨界点近傍でCO_2とジエチルカーポネート(DEC)とを混合させたときに現れる大きな発熱に着目し,この熱効果を利用した環境対応型の給熱システムを開発することを目的として着手したものである.本年度は,これまでの基盤研究においてに設計した流体のサイクルシステムのさらなる検討に加え,CO_2に組み合わせる溶剤の検索とシステムの完成を目的として次の諸項を行った. 1.これまでの給熱システムは,流量を極めて少量に限定せざるを得なかった.そこでCO_2とDECの流量のアップとそれらを有効に混合させることをねらいとして混合部の改良を行った.すなわち,これまでの単管方式に改良を加えた改良型単管方式ならびに多管方式の2種のミキサーについて主に検討を試みた.流体の総流量は,改良型単管方式では0.2 mol/min.とし,また多管方式については0.3-0.4 mol/min.とした.混合熱回収実験の結果,改良型単管方式を用いると多管方式に比較してより多くの熱量(最大5.8 kJ/molを回収可能であった.混合熱の回収率はCO_2+DEC系の発熱の最大値(約9.0 kJ/mol)に比較して約70%であり,改良型単管方式を用いた本システムは,給熱システムとして利用できることを確認した.しかし,多管方式による結果はミキサーの管長を延長することによって混合効率が向上することを示唆するもので,ミキサーの改良に有用と考えられる. 2.CO_2と組み合わせる流体としてDEC以外に大きな熱効果が得られるかどうかの検索を,混合熱の測定を通して行った.今回はCO_2にエーテルとしてジイソプロピルエーテルならびにメチルtert-ブチルエーテルを組み合わせて温度298-308K,圧力5.0-7.5MPaにおける混合熱の測定を精密熱量計を用いて行った.その結果,両系の発熱の最大値はともに298K,5.0 MPaにおいて約8.0kJ/molであった.この値はCO_2+DEC系の発熱の最大値に比較してやや小さいが,既往のCO_2+DEC系の発熱の最大値約5.0 kJ/molに比較して約1.6倍に達しており,溶剤検索の有用な成果であると考えられる.
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