研究概要 |
ショウジョウバエ群集がどのように構造化されているか,またその分布,特に低緯度側の分布境界がどのように決定されているかについて理解を深めるため,本研究では,ショウジョウバエ種間にどの程度競争が働いているか,また働きうるかを調べた.競争的関係には2タイプあり,一つは資源をめぐる競争で,もう一つは捕食者など食物網の上位者が介在する巻き添え競争である.室内における競争実験の結果,資源をめぐっては強い種内競争が認められたが,種間競争は種内競争ほど強いものではなかった.野外調査の結果もこの結果と矛盾するものではなかった.このように,資源競争が群集構造,地理分布に及ぼす影響は必ずしも大きくないようである.一方,低温耐性を獲得した種は,敏捷性が低下するとともに,成長期間が長くなり,そのため捕食される危険性が増大し,低緯度地域においては,非耐性種との巻き添え競争のため個体群を維持できない可能性が示めされた.しかし,ショウジョウバエにおいては巻き添え競争が起こりうるかどうかについては全く情報がない.そこで,巻き添え競争を介在していると考えられる寄生蜂について,まず.その種構成,分布,寄主選好性について調べた.その結果,どの寄生蜂も数種のショウジョウバエに寄生可能であり,巻き添え競争を介在しうることが明らかになった.しかし,温帯域における野外調査の結果,寄生率はそれほど高くなく,また全く寄生が行われない時期もあり,巻き添え競争は必ずしも強いとは言えなかった.もっとも,亜熱帯域,熱帯域では巻き添え競争が強い可能性もあり,さらなる調査が必要である.
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