研究課題
基盤研究(C)
本研究では、小川学術保護林(茨城県北茨木市)とその周辺の断片化した森林で、遺伝子流動パターンを決定する要因を明らかにすることを目的としている。花粉による遺伝子流動を明らかにするために、低密度受種であるハリギリの遺伝子型の決定のための実験を行った。先行研究で明らかになっている7遺伝子座のマイクロサテライトを対象にマルチプレックスPCRキットを用いた増幅、AB3100による断片長の変異検出などの実験を行い、保護林と断片化した森林での遺伝子流動の比較のためのデータを得た。また、送粉者の密度を保護林と断片林でウィンドートラップを用いて調べたデータを解析し、植生による送粉者の密度や種構成の違いを検討した。送粉者と植物の関係のネットワーク構造の理論的検討もおこなった。温帯の日本の森林でも、最近報告されている入れ子構造が認められたが、これがサンプリング・バイアスによる可能性を検討した。また、種子による遺伝子流動を明らかにするために、林内にシードトラップを設置し、ハリギリの落下種子と被食種子を採集してその分布を調べるとともに、種子散布に寄与している鳥類とそれらの移動範囲の観察も行った。種子散布者は果実密度に依存して変動することが明らかになり、森林の状況が種子散布に大きく影響していることが示唆された。逆に、小川では森林の断片化の影響は、検出されなかった。断片化しているとはいっても近傍に比較的大きい森林があること、散布者の多くが渡り鳥で柔軟に密度や滞在時間を変化させていることがその理由と考えられた。以上の結果から、小川の断片林では送粉者の移動は妨げられている可能性が高いものの、種子散布については周りの樹木の果実密度などの影響を介した間接的な効果の方が大きいことが示唆された。これが植物の遺伝構造にどのように影響を与えるかが今後の研究の重要な課題となると考えられる。
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