研究概要 |
外来種のアカミミガメと在来種のクサガメの潜水生態の違いを明らかにするため,山梨県上野原市内の桂川で捕獲した両種の個体に潜水深度・水温を記録するデータロガーを装着して水槽実験を行なった。水槽実験では各種が単独で採餌するときと他種と一緒に採餌するときとで潜水行動がどのように変化するかを,カメの成長段階による影響も含めて比較した。 結果は,他種の存在の影響は体サイズによって異なった。大きい個体ではクサガメはアカミミガメよりもよく水中を利用したが,小さい個体ではアカミミガメのほうがよく水中を利用した。たとえば大きい個体の場合,クサガメとアカミミガメが単独で水槽を利用するときの平均潜水時間はそれぞれ50秒と164秒だったが,他種と一緒に利用したときにはそれぞれ216秒と130秒になり,クサガメは長くなり,アカミミガメは短くなったのに対し,小さい個体では,単独利用時ではそれぞれ251秒と78秒だったのが,他種と一緒に利用したときにはそれぞれ232秒と70秒とあまり変わらなかった。また,水底に滞在していた時間割合は,大きい個体の場合,単独でいるときはそれぞれ0.276と0.529だったのが,一緒にいるとそれぞれ0.464と0.436になり,クサガメは効率が高くなりアカミミガメは低くなった。小さい個体の場合は,単独でいるときはそれぞれ0.451と0.101だったのが,一緒にいるとそれぞれ0.371と0.165になり,クサガメは低くなりアカミミガメは高くなった。また,一緒にいるときの採食速度は,アカミミガメが0.36g/分,クサガメが0.54g/分で,クサガメのほうが速かった。 これらの結果は,他種の存在の影響の大きさはカメの成長段階によって異なり,小さい段階ではクサガメはアカミミガメによって水中利用を制限されるが,大きくなると逆にクサガメがアカミミガメの水中利用を制限する,また,クサガメは高い採食速度でアカミミガメに対抗できる可能性を示している。
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