研究概要 |
α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH),β-MSH,γ-MSHおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は,プロオピオメラノコルチン(POMC)を前駆体とするホルモンで,メラノコルチンと総称される。下垂体におけるPOMC遺伝子の発現は,転写因子であるTpitとPitx1,Nur77によって制御されている。ラットPOMC遺伝子のプロモーター(-480/+63)をluciferase遺伝子に結合し,AtT-20細胞にトランスフェクションし,プロモーター解析を行った。POMCプロモーターにおいて,Tpit/PixREやNurRE配列はカルシウムイオン依存性にPOMC遺伝子の転写制御に関与することが分かった。さらに,NurREのほかにTpit/PixRE配列がグルココルチコイドによるPOMC遺伝子の転写の抑制に関与することが分かった。 メラノコルチン受容体にはMC1RからMC5Rまでの5種類の受容体が同定されている。MC3Rはマウスのプロラクチン産生細胞にMC3Rが発現していることや,プロラクチン分泌の亢進,プロラクチン産生細胞の増殖はMC3Rを介して起こることがわかっている。また,発情ホルモン処理によりMC3R遺伝子mRNAが転写促進されるということも報告されている。そこで,MC3R遺伝子の発現制御機構を明らかにすることを目的として,遺伝子の5'上流域を対象にしたプロモーターアッセイを行った。本研究によりMC3R遺伝子のプロモーター領域を初めて特定した。また,プロモーター領域内に転写に対して促進的,抑制的にはたらく配列がそれぞれ混在すること,エストロゲンがMC3R遺伝子に対して直接的な制御を行わないこと,PKA/PKC経路以外のAP-1配列を介するシグナル伝達系が転写活性に対して寄与しているということが分かった。
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