研究課題
基盤研究(C)
ヒアルロン酸は、N-アセチルグルコサミンとグルクロン酸が交互に連結した単純な組成を持つ高分子多糖で、糖鎖-糖鎖間の相互作用により、ナノスケールのフィブリルを形成することが知られている。また、ヒアルロン酸はその濃度や鎖長によって高次構造と物性が著しく変化して、その単調な組成からは想像し得ないほど多彩な生物活性が発揮されると考えられる。そこで本研究において、そのような多様な構造変化に関する基礎的情報を収集するとともに、受容体によるリガンド認識や活性が巧みに制御される機構について解明を試みた。走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて、ヒアルロン酸の濃度や鎖長を変化させた際の構造変化について解析を行った。その結果、ヒアルロン酸の濃度や糖鎖長に相関して球状構造の直径が増加することを明らかにした。さらに、表面プラズモン共鳴法(SPR)により、ヒアルロン酸糖鎖長や濃度、更には結合分子との会合状態が受容体のリガンド結合に与える影響について動力学的解析を行った。ヒアルロン酸や結合分子との会合体をセンサーチップ上に固定し、アナライトとしてヒアルロン酸受容体CD44融合蛋白質プローブ(CD44Ig)を用いて、リガンドー受容体相互作用に関する動力学的解析を行った結果、CD44Igはヒアルロン酸結合分子であるバーシカンの濃度増加に依存してヒアルロン酸に対する結合が増強した。この結果から、ヒアルロン酸とその結合分子との会合状態によるヒアルロン酸構造変化が、受容体のヒアルロン酸認識の促進に働くことが示唆された。更に、CD44発現細胞を用いて、SHAP-ヒアルロン酸複合体を被覆した基質に対する細胞接着性を評価した。その結果、ヒアルロン酸単独を被覆した基質に比して、より強い細胞接着活性を示すことを明らかにした。このことは、ヒアルロン酸結合分子SHAPによる高分子会合体の形成が、CD44とヒアルロン酸の相互作用を介した細胞認識を増強することを示唆している。
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