研究概要 |
ヘパラン硫酸(HS)は様々な発生、生理的、病理的な過程に重要な役割を持つ。これらの機能は細胞増殖因子を含め多種類のタンパクとHSの構造に依存した相互作用による。私たちはマウス、ショウジョウバエ、ニワトリ胚、変異細胞を用いてHSの2-硫酸、6-硫酸の機能を解析した。 1 ヘパラン硫酸によるヘパリン結合性増殖因子(HB-GF)シグナリングの制御 (1)強力な血管形成因子であるVEGF165の管控形成能、シグナル活性にヘパラン硫酸の6-硫酸残基が必要であることを明らかにした(2005,J.Biol.Chem.)。(2)ヘパラン硫酸6-硫酸転移酵素(HS6STs)の3つのアイソフォームのうちHS6ST1遺伝子を破壊したマウスの胎盤迷路層では血管形成異常が観察され、VEGFの発現が減少することによることを示唆した(2007,J.Biol.Chem In press)。(3)ショウジョウバエにおいてHS6ST遺伝子を破壊すると、39%に気管形成の異常が現れ、FGF/FGFRのシグナルの阻害によることを明らかにした(2006, J.Cell Biol.)。(4)ニワトリ胚肢芽形成におけるFGF-8,-10のシグナルをHS2STが制御していることを明らかにした(2007,J.Biol.Chem. In press)。(5)FGFファミリーのシグナリングにおける6-硫酸化の要求性を調べるため、HS6ST1とHS6ST2のダブルノックアウトマウスから線維芽細胞を単離した。変異細胞ではHSヘパラン硫酸の6-硫酸残基をほとんど合成できず、FGF-4の活性が最も強く阻害された。 2 ヘパリンの6_硫酸化機構 マスト細胞の顆粒内にあるタンパク質のいくつかはヘパリンと結合して保存され、IgEの刺激によって脱顆粒を引き起こし、アレルギーを引き起こす。タンパクとの結合にはヘパリン中の硫酸残基が重要であることが示されているが6-硫酸化の関与についてはわかっていない。先ず、ヘパリンの6_硫酸化合成機構を明らかにするため、マスト細胞が多く存在する耳のヘパリン構造を解析した。その結果、HS6ST-1ノックアウトマウス(KO)のヘパリン構造は野生型マウスと同じであった。一方、HS6ST-2KOでは典型的なヘパリン構造はほとんど合成されず、6_硫酸化構造が半減することを明らかにした。
|