研究概要 |
(i)V-ATPaseより(Ntp)Kリングを精製し、これをNa^+存在下結晶化し、多重重原子置換法を使って、2.1Å分解能でその構造を決定した(The Membrane Rotor of The V-Type ATPase from Enterococcus hirae. PDB:2BL2)。得られた構造はKザブユニットが対称10量体のリングを形成しており、Kサブユニットは4本の膜貫通ヘリックスで構成されていた。Na^+と考えられる電子密度がヘリックス2-3間のリング側面中央(E^<139>近傍)に存在しており、計10個のNa^+がそれぞれのKサブユニットに同様に結合していた。Na^+結合ポケットは5つの残基(ヘリックス2のL^<61>の主鎖、T^<64>の側鎖、Q^<65>の側鎖、ヘリックス3のQ^<110>の側鎖、ヘリックス4のE^<139>の側鎖)から構成されていた。Na^+結合ポケットはリング疎水性外側面に並んでおり、リング回転によるイオン輸送機構モデルを分子構造から実証したことになる。 (ii)9個の各サブユニット遺伝子の欠失株より細胞膜画分を調製し、界面活性剤による可溶化後、グリセロール密度勾配遠心を行って、V_0V_1複合体の形成について調べた。その結果、帰属が不明であったF, Gサブユニットを含めてA, B, C, D, E, F, GサブユニットがV_1部分を構成し、I, KサブユニットがV_0部分を構成することがわかった。この解析の過程でBサブユニットを欠失していても、少なくともA, C, D, I, Kサブユニットから構成される複合体が形成されることがわかり、Aサブユニットが固定子の構築に関わることと考えられた。このようにイオン輸送に関わるNtpK/NtpIサブユニット間の膜内相互作用の解析を、立体構造に基づいて詳細に進める上での研究基盤を整えることができた。
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