研究概要 |
ファシンは,アクチン繊維の束化タンパク質である.ファシンのアクチンへの結合は,リン酸化で制御される.我々は,リン酸化型ファシンと脱リン酸化型ファシン(ファシンのリン酸化部位のアミノ酸を置換し,疑似脱リン酸化,疑似リン酸化したもの)それぞれを,細胞に発現させ,リン酸化の有無による分布の違いを示した.野生型はアクチン束と細胞質に,リン酸化型は細胞質に,脱リン酸化型はアクチン束に分布した.本研究では,リン酸化によりファシンの細胞内の分布が異なる仕組みを,蛍光1分子解析で探ることを目的とした. 前年度は,EGFP-野生型ファシン,EGFP-脱リン酸化型ファシン,EGFP-リン酸化型ファシンを,ニューロブラストーマ(NG108-15細胞)に導入した安定形質発現株をそれぞれ作成した.この安定形質発現株を,神経様に分化させ,成長円錐を作らせ,EGFP野生型ファシンを発現したニューロブラストーマの成長円錐で,EGFPファシン1分子のスペックルを記録することに成功した. 本年度は,EGFP-脱リン酸化型ファシン,BGFP-リン酸化型ファシンについても1分子蛍光を捉えた.野生型,脱リン酸化型,リン酸化型の比較解析を1分子レベルで行った.現在,大量の画像データを解析している(投稿準備中).さらに,この蛍光1分子解析の手法を発展させ,他のアクチン関連蛋白質でも,同様の解析を狙っている.その第一段階として,プロテオミクスの手法で,成長円錐で存在が確認されたアクチン関連蛋白質のEGFPラベルしたアクチン関連蛋白質(約30種)をニューロブラストーマの成長円錐に,網羅的に発現させ,動態を記録した,この研究は,バイオイメージング学会で晝間賞(ポスター賞)を受賞した. 以上のように,ファシンに絞って始めた解析は,アクチン関連蛋白質全般で使えることが明らかになり,今後の発展が期待できる結果が得られた.
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