研究課題
基盤研究(C)
分裂酵母では減数分裂前期過程の開始に伴って、紡錘極体(SPB)から放射状に伸びたダイナミックな星状微小管が形成され、核融合やホーステール核運動を司り、効率の良い減数分裂組換えを促進する。減数分裂前期の終了に伴って星状微小管構造は解体し、減数第一分裂の開始と共に紡錘体形成が行われる。Sanger研究所が公表している分裂酵母のゲノム配列および転写情報を用いて、SPB構成因子に多く見られるcoiled-coil構造を有するタンパク質をコードし、減数分裂期に転写が促進されている遺伝子を検索し、減数分裂前期特異的にSPBに局在するHrs1を単離した。hrs1遺伝子破壊株は体細胞周期には明らかな表現型を示さないが、減数分裂前期には、ダイナミックな星状微小管構造が形成されず、ホーステール核運動が誘起されなかった。hrs1遺伝子を体細胞周期に強制的に発現させるとSPBに局在し、SPBを唯一の微小管重合中心とした星状微小管構造の構築が観察され、ホーステール運動を模した核運動が観察された。Hrs1はγ-Tubulin Complex(γ-TuC)構成因子のAlp4、γ-TuC複合体因子Mod20/Mto1、SPB因子のKms1,そしてHrs1自身と相互作用した。以上の結果から、Hrs1がこれらの因子と相互作用して微小管マイナス端をSPB近傍で保持することにより星状微小管構造の構築に寄与していると考えられた。Hrs1は、星状微小管構造が解消するのと時期を同じくして減数第一分裂開始前に速やかに消失する。このHrs1の時期特異的な消失の生理的意義を明らかにするため、減数第一分裂開始後もSPBに留まる変異型Hrs1(Hrs1.d10)を作製し、その表現型を観察した。Hrs1.d10を発現している細胞では、スムーズな紡錘体形成が阻害され、ホーステール核運動終了時から減数第一分裂prophaseの開始に至る時間が長くなっていた。この結果は、減数第一分裂開始前のHrs1の迅速な消失が、減数第一分裂のbipolarスピンドル形成に必要である可能性を示唆しており、Hrs1の発現と消失が時期特異的に行われることが減数分裂期の精密な微小管制御に不可欠であることが明らかになった。
すべて 2006 2005
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Nature 442
ページ: 45-50
Current Biology 15
ページ: 1479-1486