研究課題
基盤研究(C)
様々な動物種において、卵母細胞の細胞質には、核膜孔様の構造が高密度で分布する特殊な膜annulate lamellae(AL)が形成されるが、これまでにALの生理的機能は明らかにされていない。減数第一分裂前期(G2/M)に停止したツメガエル未成熟卵母細胞(未成熟卵)ではALが非常によく発達している。核膜以外の場所に多量の核膜孔様構造があることから、未成熟卵では核輸送が特殊な制御を受けている可能性が示唆される。本研究では、ツメガエル未成熟卵母細胞(未成熟卵)において、核輸送キャリア分子であるimportinα(impα)が細胞質に多量に存在するALに結合しており、これによりその機能が抑制されていることを明らかにした。また、未成熟卵の細胞質にimpαを顕微注射すると、α/β型核輸送が促進されるだけでなく、細胞死が誘起されることを見いだした。これらの結果に基づき、Hl8年度の研究では、1)impαがALに結合する機構の解明を目指した。ALには多量の核膜孔複合体様構造が分布し、そこにはヌクレオポリンが存在することが知られている。そこで、核内でimpαに結合することが知られているヌクレオポリンNup50が、細胞質でのALとimpαとの結合に関与するかについて検討した。未成熟卵よりAL画分を調製し、これをCAS-RanGTPとともにインキュベーションしたところALからimpαが遊離したが、一方、CAS-RanGDPでは遊離しなかった。この結果は、ALにおけるimpαの結合がヌクレオポリンNup50を介していることを強く示唆した。そこで、抗Nup50抗体を作製し、Nup50の存在様式を調べた結果、Nup50はALにはごく少量しか存在しないことが判明し、impαとALとの結合はNup50を会さない別の機構によると結論した。次に、2)遊離impαの増加によりどのような経路で未成熟卵の細胞死が誘起されるかについて検討した。Impαを顕微注射した未成熟卵では、α-Fodrinやラミン蛋白質がカスパーゼにより切断を受ける、すなわち、遊離impαの上昇により未成熟卵のアポトーシスが誘起されることが判明した。以上の研究結果により、未成熟卵のALはimpαの機能を抑制することにより細胞死を回避する役割を果たすことが強く示唆され、この機構は卵母細胞の長期間にわたる停止に重要であると考えられる。
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