研究概要 |
本研究は,慣行の施肥方法で養液栽培したホウレンソウを,収穫直前に連続照明することによって植物体内の硝酸代謝活性を維持し,品質を保持しながら植物体内に残存する硝酸塩含量を低下させることを目的とした。 ホウレンソウの収穫直前に夜間照明を継続すると可食部の硝酸塩含量が低下するとともにアスコルビン酸およびカロテン含量が増加した。一方、ホウレンソウ特有の有害成分であるシュウ酸含量も連続照明処理によって低下したが、低下程度は極わずかであった。そこで次に、夜間照明処理とシュウ酸代謝の主要経路である光呼吸系を抑制する高CO_2処理を組み合わせ、硝酸とシュウ酸を同時に低減することを試みた。その結果、ホウレンソウの光合成速度は、通常大気条件からCO_2濃度を高めるにつれて上昇し、処理濃度である900ppm条件下では、通常大気条件下の約1.6倍に増加した。また、光呼吸速度は、光合成速度とは逆に、CO_2濃度を高めるにつれて低下し、900ppm条件下で完全に抑制された。対照区の硝酸塩含量は、明期に入ると徐々に低下したが、高CO_2処理によって対照区に比較して大幅に低下し、処理開始9時間目には対照区の約54%の値となった。シュウ酸含量は、対照区ではほぼ一定の値で推移したが、高CO_2処理区では経時的に低下する傾向となり、処理開始9時間目には対照区と比較して14%ほど低下した。アスコルビン酸含量は、両処理区で増加する傾向となったが、処理間差は明確ではなかった。以上より、高CO_2処理によって光合成が高まることで硝酸低減およびアスコルビン酸増加効果が維持され、さらに光呼吸が抑制されることでシュウ酸代謝が抑制され、ホウレンソウの有害成分を軽減しながら有効成分を高める効果があることが明らかとなった。
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