研究概要 |
近年、カテキンなどのポリフェノール化合物(PP)が、抗酸化性など種々の機能を有することが明らかにされ、お茶などの機能性飲料として供給されている。筆者らはこれまでに摘果幼果やジュース搾汁粕等の園芸廃棄物に多量のPPが含まれることを認めたが、その種類や機能性等については未検討であった。そこで、本研究ではまずニホンナシPPの有効利用を目的とし,開花後の日数が正確な果実を用いて発育過程における全PP含量並びにPPの種類を調べるとともに、ニホンナシのPPの機能性と有効利用について調べた。 ニホンナシの摘果幼果には約1.2FW%の全PPが含まれ、その30%がクロロゲン酸類であること、また、幼果PP抽出液の抗酸化性についてTBA試験、リノール酸酸化抑制試験等、3種類の方法で検討した結果、いずれの場合も抽出液はBHTの2〜3倍の抗酸化能を示した。このPPは果実発育に伴って著しく減少し、生食用ナシの収穫適期の果肉には摘果幼果の8〜10%にすぎなかった。このように、摘果幼果は抗酸化剤としての新規機能性PPの供給資材として有望であることを明らかにした。 上記の結果から、引き続きニホンナシ摘果幼果の凍結乾燥品より健康茶を試作し、その成分及び機能性の検討や嗜好性などについて検討を行った。その結果,95℃で5分間煮出しすることにより最も効果的に機能性PPが抽出され,その抽出液に比較的高い抗酸化活性が確認された。さらに、その主成分はクロロゲン酸であることを明らかにした。そこでこの条件で調製した茶飲料を用いて,官能検査を行ったところ,苦味・渋みが少なく僅かに甘みを有することから,茶飲料として適性を有することが示唆された。 これらの研究と並行して種々の園芸廃棄物等に含まれるポリフェノール酸化酵素についてもその精製や性質の検討を行い、有益な結果を得た。
|