研究課題
基盤研究(C)
発光細菌Photobactrium leiognathiは、同一種ながら、4種類の宿主(ヒイラギ、ケンサキイカ、ホタルジャコ、ヒカリイシモチ)の発光器に共生する共生発光細菌である。我々はこれまでの研究で、P.leiognathiの発光をコードするlux遺伝子が、宿主の違いにより2系統に分かれることをみいだした。この申請では、4種類の宿主からのP.leiognathi分離株を用いて、共生により分化しつつあると思われる「細菌の種」を、ゲノム構造や遺伝子解析により検証し、その定義について検討することを目的とした。[ゲノム構造解析]:パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)を用い、2種類の宿主(ヒイラギ、ヒカリイシモチ)から分離したP.leiognathiのゲノム構造解析を行った。その結果、2宿主の分離株で異なるバンドパターンが得られ、宿主により共生細菌のゲノム構造に違いがあることが示唆された。[遺伝子の分子遺伝学的解析]:4種類の宿主から分離した計15株を用い、ハウスキーピング遺伝子5種(gyrB、ftsZ、mreB、topA、16S rRNA)を対象に解析した。個々の遺伝子の塩基配列から系統を解析した結果からも、また、5種の塩基配列を連結し解析した結果からも、lux遺伝子で得られた宿主による2系統は認められなかった。塩基置換が起きたサイトから遺伝子配列を解析する、MLST(Multilocus sequence typing)解析を行った結果からも、宿主による違いは見られず、15株すべてが異なるタイプと結論づけられた。以上より、lux遺伝子が示した2系統は発光遺伝子に特徴的なものであること、また、ハウスキーピング遺伝子では単系統であったことから、P.leiognathiが示した2系統は、種分化の過程を示す結果ではないことが示唆された。
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