研究概要 |
乳脂肪球皮膜主要構成糖タンパク質の一つ,MFG-E8は退縮期乳腺において発現が上昇し,退縮が進むにつれて上皮細胞のルーメン側に蓄積することが明らかとなった。退縮期の乳汁をショ糖密度勾配遠心分離法により細分画すると,エキソソーム様膜小胞とほぼ同様な密度をもつ画分に強いホスファチジルセリン結合活性,アポトーシス細胞結合活性,マクロファージリクルーティング活性が見出された。すなわち,退縮期乳腺では,自ら分泌したMFG-E8がアポトーシスを受けた乳腺上皮細胞へと結合し,その後マクロファージによる貪食を仲介するメカニズムが明らかとなった。 退縮期の乳汁をショ糖密度勾配遠心分離により分画し、プロテオミクス解析に供した結果,エキソソーム様膜小胞とほぼ同様な密度をもつ画分にMFG-E8が主要タンパク質として同定されたほか,ブチロフィリン,カベオリンも検出された。また泌乳期の乳汁中ではMFG-E8が乳脂肪球皮膜に強く固定化されているのに対し,退縮期では何らかの界面活性剤様作用により遊離し,結果的にホスファチジルセリンに対して高結合能を示すことが明らかとなった。乳腺上皮細胞を用い、培養培地からの血清の除去処理などによりアポトーシスを誘導後,転写レベル,タンパク質レベルでの発現を調べた。予想に反し,MFG-E8の発現が上昇するという明確な結果は得られていない。さらに高感度なMFG-E8遺伝子発現制御機構の解明を目指し,翻訳開始点上流約2kbpのプロモーター/エンハンサー領域をPCRにより増幅し,レポーターアッセイ用のコンストラクトを構築したが,RT-PCRの結果と同様に現在までpositiveな結果は得られていない。
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