研究概要 |
アラビノガラクタンープロテインは高等植物の細胞表層プロテオグリカンであり、植物の生長、分化と密接な関係が示唆されているが、詳細な機能は明らかになっていない。糖鎖の分解酵素のうち、エキソ-1,3-ガラクタナーゼは配列情報が全くなかったことから、我々はPhanerochete属、Streptomyces属、Arabidopsis属より、初めて本酵素遺伝子をクローニングした。これらの酵素は触媒モジュール以外に機能未知のモジュールを含んでいた。そこで、本研究ではエキソ-1,3-ガラクタナーゼが有する機能未知モジュールの機能を明らかにすること、及びエキソ-1,3-ガラクタナーゼの構造機能相関を明らかにすることを目的として研究を行った。 得られた全ての酵素はβ-1,3-結合した2つのガラクトースの間のみを加水分解するという極めて厳密な基質特異性を有しており、側鎖をバイパスして主鎖のβ-1,3-結合したガラクタン部分を加水分解していくという珍しい性質も有していた。Phanerocheteの酵素が有する基質結合モジュール(CBM35)は1,3-ガラクタンに特異的に結合する新規なモジュールであることを明らかにした。一方、Clostridiumのエキソ-1,3-ガラクタナーゼが有する基質結合モジュール(CBM13)は1,3-ガラクタンに結合する新規なモジュールであるが、酵素部分の認識部位に結合することから、酵素活性を阻害した。P.chrysosporiumの酵素は他の酵素に比べ、比活性が高いことから、CBM35の活性への影響を調べるために、C.thermocellumの酵素のC末端にP.chrysosporiumの酵素のCBM35を繋いだ酵素を構築し、その酵素のを解析した。この変異体酵素はC.thermocellumの酵素より、β-1,3-ガラクタンに対する活性が高く、基質濃度が低い場合にその差が顕著であった。このことより、CBM35は酵素の周りの基質濃度を高めることにより、酵素活性を高める機能を有することが明らかとなった。 また、エキソ-1,3-ガラクタナーゼ自信が有する興味深い性質を解析する為に、結晶構造解析も試みている。昨年度はP.chrysosporiumの酵素の結晶が得られたものの質が悪かったが、糖鎖を除去して結晶を調製することによって、2.2Åの解像度のデータが取れるまでに改善した。
|