研究概要 |
この二年間の研究により次のような知見および成果が得られた。 (1)プロドラッグとして期待された1-クロロニコチニル-2-ニトロイミノ-1,3-ジアザシクロヘキサ-5-オンあるいは2-ニトロメチレン誘導体を合成する目的で、5位のアルコール体の酸化反応あるいはアセタールの加水分解を試みたが、これら出発物質の難溶性および生成物の不安定から、生成物を得ることができなかった。 (2)ネオニコチノイド系殺虫剤イミダクロプリドの3N位をビニレンカルボネートメチル基で修飾した化合物は、加水分解速度の測定および殺虫試験や神経活性試験から典型的なプロドラッグの性質を示すことが明らかとなり、世界最大の殺虫剤の初めてのプロドラッグを合成した。 (3)プロドラッグ用修飾基を結合する分子骨格の適当な位置を探索した。イミダクロプリドや類縁体のピリジンの5位に置換基を導入することにより、置換基の種類によってプロドラッグの可能性があるばかりではなく、母体活性分子とは異なった活性を示す可能性もあることが判明した。21種の置換基と殺虫活性および神経活性の定量的な相関関係式を求めた。 (4)イミダクロプリドの3Nに3-フッ化プロピル基を導入したところ高い殺虫活性が見られた。プロドラッグとして、可能性を論じると共に、フッ素原子の水素結合能力を議論した。 (5)効果的なプロドラッグの設計のためには、ネオニコチノイド分子のファーマコフォアを明らかにする必要がある。その観点から、基本構造を系統的に変化させ、各分子の脂溶性/水溶性の指標(分配係数Pow)の測定値と電荷密度の計算値を含めた構造と殺虫活性や神経活性の相関関係を求め、ニトロ基の酸素原子の電荷と分子の脂溶性が活性に大きく関わっていることが判明した。
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