研究概要 |
本研究では,タウリン蓄積による植物への耐凍性付与を目的として,まず,モデル生物である酵母を用いてタウリン合成酵素遺伝子を発現させ,その耐凍性および酸化ストレス耐性について検討を行い,その結果を踏まえて,高等植物への遺伝子導入の検討を行った。まず,酵母での発現効率向上のため,タウリン合成酵素であるシステインジオキシゲナーゼ(CDO)とシステインスルフィン酸デカルボキシラーゼ(CSD)遺伝子を改変し,タウリン合成能向上を試みた。 タウリンの蓄積量を上げるために高等植物に遺伝子を導入する前の予備実験として,酵母を用いてスペーサーを介した融合遺伝子発現を試みた。その結果,CDO-CSD融合蛋白質をWestern blottingにより確認した。また,本酵素発現によりタウリン(25μmol/g dry-weight)およびその前駆体であるヒポタウリン(41μmol/g dry-weight)の蓄積が確認された。融合蛋白質発現により,タウリンの蓄積量の向上は確認できなかったが,ヒポタウリンの蓄積量の向上が認められた。 次に,タウリン高蓄積酵母の耐凍性および酸化ストレス耐性の評価を行った.耐凍性は-20℃,24時間凍結前後のコロニーカウントによる生残率の測定,酸化ストレス耐性の評価については0.2%H_2O_2,0〜3時間処理前後のコロニーカウントによる生残率の測定によって行った。コントロール株と比較し,有意差は認められなかったが,タウリン蓄積による耐凍性向上が認められた。酸化ストレス耐性にはコントロール株と比較し,耐性向上が認められた。この結果により,タウリンが耐凍性向上に寄与し,その中間代謝物であるヒポタウリンが酸化ストレス耐性に寄与することが明らかになった。 さらに,タウリン合成酵素をコードする遺伝子二種類(cdo遺伝子,csd遺伝子)を融合遺伝子として発現するコンストラクトを作製した。
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