研究概要 |
生活習慣病予防に関与すると考えられているカロテノイドやビタミンK等の脂溶性栄養機能成分は植物性食品に豊富に含まれるが、これらの生体利用性は著しく低い。食餌脂質は,脂溶性栄養機能成分の消化管内での分散媒体,腸管混合ミセルの構成成分,カイロミクロンの構成材料として消化・吸収を改善すると考えられるが,その詳細な機構は未解明である。本研究では,食品成分として脂質や食物繊維に注目し,カロテノイド等の難吸収性脂溶性栄養機能成分の可溶化・吸収調節作用を腸管混合ミセルの生成(可溶化過程)と細胞への取り込み(吸収過程)の観点から解析した。 脂溶性栄養機能成分の腸管混合ミセルへの可溶化に対する食餌脂質の影響を調べたところ,野菜からのβ-カロテンの可溶化は油脂の添加によって促進されたが,ルテインやα-トコフェロールの可溶化は促進されないことを見出した。油脂の促進効果は非極性のカロテン類の可溶化に現定されることが明らかとなった。中・長鎖の遊離脂肪酸及びこれらのアシルグリセロールに促進効果が認められ,油脂の消化産物にも可溶化促進効果があることを見出した。調べた緑黄野菜中のβ-カロテンについては油脂による可溶化促進効果が認められたが,一部の野菜は油脂の有無に拘わらず可溶化率が良好であった。緑葉野菜に含まれる主な複合脂質である糖脂質が混合ミセル可溶化カロテノイドの腸管モデル細胞への取り込み(吸収過程)に与える影響を解析した。リン脂質のホスファチジルコリンと同様に糖脂質のジアシル型は取り込みを抑制しリゾ型が取り込みを促進することを見出し,野菜中に含まれる糖脂質がカロテノイドの生体利用性に影響を与えることが示唆された。
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