研究概要 |
一般的な日本の森林,熱帯(東カリマンタン島),カルスト地域(中国貴州省)の多数の森林土壌においてHedley法による形態別Pと微生物バイオマスPを測定し,その特徴とともに森林植生へのP供給を考察した。その概要は,下記のとおりである。 1.可給態P(Ion型P+Ca可溶型P)濃度は著しく低く(<30μgP/g),森林の年P吸収量より少なかった。 2.一般的な日本の森林土壌において易分解性-有機態Pは多く,森林植生へのP供給には,易分解性-有機態PからのPの可給化が重要であるといえる。 3.風化の進んだ熱帯林土壌では,森林植生が衰退するに従い全リン濃度が減少し,可給態Pや易分解性-有機態Pの画分の割合が低下した。 4.熱帯林土壌において微生物バイオマスPは,可給態Pと易分解-性有機態Pの合計より多く,微生物によるPプールが,P供給力に重要であると考えられた。 5.カルスト地域の森林土壌では,可給態Pや易分解性-有機態Pは,土壌pHと全炭素量に強い正相関がみられた。 6.カルスト地域の可給態Pは,BrayII法やOlsen法のPと正の相関がみられ,BrayII法の値と近似していた。 7.微生物バイオマスPは,利用可能なPとほぼ同程度の値となった。カルスト地域では微生物バイオマスPがP供給力の評価指標になるといえる。 8.三宅島において多量の火山灰が固結した地域では,N供給力がなく貧栄養であり,根粒菌と共生するオオバヤシャブシの成長が旺盛であった。 9.窒素の供給が多い立地(熱帯天然林や大気N沈着が多い関東山地など)では,P供給速度が間に合わず,Nに対してP不足の状態がみられた。 10.一方,熱帯の荒廃地や三宅島の酸性化した立地においては,根粒のN固定に必要なPの供給が,今後の森林植生回復の鍵であると考えられた。
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