研究概要 |
生体内でメチル基を供給するために働くC1代謝経路では、serine hydroxymethyltrans Transferase(SHMT), glycine decarboxylase, formyl THF synthetase, THF dehydrogenase/cyclohydrolase、 methylene THF reductase、 methionine synthetase、 methionine adenosyl transferase等の酵素が機能している。これらの酵素は、生体内での様々な化合物合成のためにメチル基を供給し、リグニンモノマーの芳香核に結合するメトキシル基の合成にも深く関与していると考えられる。我々は、C1代謝とリグニン生合成との関係を明らかにするため、C1代謝経路に関わる14の遺伝子に着目し、シロイヌナズナを用いてそれらの発現プロファイルを調査した。その結果、SHMTの発現がリグニン合成と相関しているとの傍証を得、7つあるSHMT遺伝子の1つであるSHMT-7が、リグニン合成の盛んなシロイヌナズナの花茎で強く発現していることを突き止めた。ただし、リグニンは花茎が成熟するに従って蓄積するが、この段階的なリグニン合成とSHMTの発現の間には、強い相関は見られなかった。SHMT-7を欠損するT-DNAタグラインを選抜し、その表現型を調べたところ、野性型に比較してややリグニンが減少している傾向が見られたものの、顕著な違いを見出すことはできなかった。SHMTを含むC1代謝関連遺伝子群の更に詳細な発現解析を進めることで、C1代謝とリグニン合成との関係が明らかになることが期待される。
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