研究概要 |
本研究は,鹿児島湾の低利用資源,Plesionika semilaevis(以下,ジンケンエビ)を地域特産資源として有効利用し,漁村活性化をはかるために,水産資源生物学,食品加工・品質管理学,海洋社会科学それぞれのアプローチに基づく研究で得られた知見を統合・整理して地域に提供することを目的とする。 各アプローチによる研究成果の概要は以下の通りである。 水産資源生物学的アプローチ:鹿児島大学水産学部附属練習船南星丸を用い,同湾内に設定した8定点おいて定期定点試験底曳網調査を行い,分布の解明と可能供給量の模索を行った。本種は採集個体数と重量のどちらにおいても最優占種であった。周年にわたって湾中央の最深部付近に位置する2定点(水深180mと220m)に集中的に分布したが,両定点の間では性比や体サイズ組成に違いが見られた。抱卵個体の出現状況より,本種は湾内の分布域一帯で繁殖を行うと推察された。 さらに,本種と同様に有効利用が望まれるサルエビTrachysalambria curvirostrisにも着目し,産卵期を明らかにした。 食品加工・品質管理学的アプローチ:ジンケンエビを食材として利用する際の外骨格を軟化させるための手法が確立できた(特許公開中(特開2008-245624))。 海洋社会科学的アプローチ:ジンケンエビのような地域特産水産資源の有効利用について,消費者への認知度を高めるブランド化の視点から検討した。水産物で,漁業協同組合等が自らの生産物が他より良いものであると消費者に認知される「個別ブランド」を確立することは,ベンチャービジネスを立ち上げるのと同様の困難な課題があると考えられた。また,単一の漁協では個別ブランドを新たに造る力がない場合には,近隣の異業種等と連携することにより「地域ブランド」を造ることが出来ると考えられた。
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