研究課題
基盤研究(C)
魚類の皮膚粘液中には種々の生体防御因子が含まれ、それらの個々の性状と機能については知見が蓄積されつつある。しかし、皮膚を感染や炎症に関わる反応系としてとらえ、それらの調節機構を調べた例は少ない。本研究は3種類の粘液レクチンが同定されているマアナゴを対象として、レクチンおよびムチンの分泌、産生の調節に関わる因子を探ろうとした。また、それぞれの分泌装置である棍棒細胞および粘液細胞に特有のタンパク質についても解析を進めた。本研究の成果として、まず、マアナゴの表皮細胞を高い生存率で分離、回収する方法を確立した。この方法は同時期に行われたサブトラクション法による皮膚での生体防御遺伝子の検索に大きく貢献した。この細胞を用いてin vitroで種々の細菌由来物質による刺激を加え、培養上清中に放出されるマアナゴレクチン、congerinの濃度をELISAで測定した。また発現量の変化をRT-PCRで調べた。その結果、congerinはこれらの刺激に対して明瞭な変化を示さず、恒常的に産生・分泌されることが判った。皮膚切片および分離細胞を種々のレクチンで染色したところ、棍棒細胞の細胞質、および粘液細胞の表面にピーナッツレクチンと反応する糖タンパク質の存在が認められた。このタンパク質がそれぞれの細胞に特有の機能と関連する可能性があると考え、その精製を試みた。その過程で分子量25kのガラクトース結合性レクチンを得、その一次構造を明らかにした。さらにいくつかの糖タンパク質の存在がレクチンプロッティングで確認されており、棍棒細胞、粘液細胞の未知の機能を探る手がかりを得ることができた。一方、粘液の主成分であるムチンについては魚類ではまだ一次構造を明らかにした例はない。マアナゴ皮膚粘液ムチンの精製、および構造解析を試みたが、残念ながら成果を上げるには至らなかった。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
Fish and Shellfish Immunology 24
ページ: 366-372
ページ: 366-371