研究概要 |
沖縄地方では,豪雨時における陸域から海域への赤土流出が,下流域および沿岸域の水環境や生態系に著しい悪影響を与えている.農地由来の土砂流出は,赤土流出の原因の1つとされており,特に微細土砂の流出軽減対策が急務となっている.沖縄県の耕作放棄地は耕地面積の5%を占めることから,農地下流側に位置する耕作放棄地などの遊休農地を緩衝帯として利用することが合理的である.遊休農地における微細土砂の捕捉には,密生する植生の抵抗による流水の速度減少に伴う土砂の沈降・堆積作用が大きく寄与する.現在,こうした条件における微細土砂の沈降・堆積作用を評価する手法はなく,遊休農地が持つ微細土砂の捕捉効果を最大限発現させるための諸元決定が困難である.本研究では,遊休農地における微細土砂の捕捉効果を最大限発現させる設計手法の構築を念頭に置き,遊休農地の植生が持つ微細土砂の捕捉機能を評価をする手法を構築することを目的とした. 遊休農地の植生が持つ微細土砂捕捉過程は,沖縄地方において現在取り組まれている草生帯の土砂捕捉過程と酷似している.このため,本研究は,遊休農地の植生が持つ微細土砂の捕捉機能を評価する目的の他に,草生帯の土砂捕捉機能の評価を念頭に置きながら,相補的に本研究を推進した.具体的には,沖縄本島北部の圃場において草生帯の土砂捕捉実験を行って現地観測データを収集し,現地における植生の土砂捕捉実態を明らかにした.水理模型実験を行って草生帯および遊休農地を模擬した植生条件下における水理特性および微細土砂の輸送・堆積特性を明らかにした.植生条件下における微細土砂の輸送・堆積現象を再現する数理モデルを構築した.構築した数理モデルを用いて,現地スケールの草生帯と遊休農地における微細土砂の捕捉効果を評価した.
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