| 研究概要 |
水稲布マルチ直播・有機栽培は,布マルチによる雑草の抑制,直播による経費削減および省力を目的に,無農薬・無化学肥料で構築された全く新しい水稲栽培法である。本研究は,この栽培法を機械化するため,種籾を2枚の不織布の間に挟み込む播種システムの開発,布マルチを能率的に敷設する既存の田植機利用によるマルチ布敷設機,及び敷設時に風による布のめくれを防止する散水装置等を開発し,これら装置の性能を室内及び野外実験により明らかにし,実用化の可能性について検討したものである。得られた結果の概要は,次の通りである。
1.長さ100m,幅110cm,目付量100g/m^2の不織布を2枚重ねに巻き取る間に種籾を4条に,45〜50mm間隔に3〜4粒点播する播種システムを試作した。種籾入り不織布の製作時間は,1ロール当たり約7.5分,10a分(約13ロール)で約97.5分であった。
2.市販の乗用田植機に布ロール及び散水装置を搭載したマルチ布敷設システムを試作した。敷設装置は,田植機の油圧リンク機構に簡易な布ロール取付けフレームを装着したもので,1ロール及び2ロール式の2種を試作した。
3.散水装置は,電動式ホース巻取り機,揺動式散水ノズルバー(3頭口)からの構成である。
4.代かき14日後の小圃場で2ロール式の圃場作業量を調べた結果,1ロール式の約1.3倍(8.9a/h)で,2ロール式の効果は少なかった。そこで,敷設長さを100mと仮定し,圃場作業量を求めた結果,一般的な6条田植機の場合とほぼ同程度、補助作業者1名を加えるなら,さらに能率向上が期待できることが分かった。
5.代かき2日後及び14日後のオペレータの心拍数増加率を調べた結果,前者で120.5%(Metsで2.2),後者で114.1%(1.8)となり,圃場が硬いほど身体負担が軽減できた。
6.散水装置に関しては,噴霧圧3MPa,走行速度0.9m/sec以下なら風による布のめくれは防止できた。
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