研究概要 |
[目的]我々は乳酸菌が生産するリン酸化多糖の機能性について研究を遂行している.この研究ではリン酸化デキストラン(P-Dex)が免疫調節作用特性についてin vitroならびにin vivoにおける効果を検証した.とくに,P-Dexのアレルギ予防作用に着目し,オボアルブミン(OVA)感作マウスを用いてアレルギーの抑制効果を解析した.また自然免疫におけるリン酸化多糖の認識について検討し,機能性食品への応用性を模索した. [方法および結果]デキストランのリン酸化条件を検討した結果,pH5.0,160℃で24時間加熱することにより,最大リン含量(6.8%)のP-Dexが調製できた.リン酸基の導入によりマウス脾臓細胞に対する幼若化活性が有意に誘導され,リン含量と幼若化活性の間に相関関係が認められた.またP-DexはB細胞マイトジェンであることが判明した. OVA感作マウスにP-Dexを経口投与したところ,Th1系サイトカインのmRNA発現が増強され,またTh2系に偏向した場合でもTh1系免疫応答を強く誘導した.また樹状細胞(CD11c^+CD8α^-細胞)においてCD86発現を増強し,IL-10のmRNA発現も誘導された.これらの結果より,P-Dexはアレルギー反応を抑制し,免疫寛容を誘導することが示唆された. さらに,ブタ腸管のバイエル板からRP105およびMD-1をコードしているcDNAをクローン化し,リン酸化多糖がRP105とMD-1を介して一連の免疫反応を活性化させていることを解明した. 以上より,多糖はリン酸基を導入することによってアレルギー改善作用を高めることが証明され,また免疫反応誘導機構の一部を解明することができた.
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