研究概要 |
本研究では、1)ブタ卵母細胞(未成熟卵子)の体外成熟用限定培地におけるcysteamineまたはβ-mercaptoethanolの添加効果,2)ブタ未成熟卵子のガラス化法の確立,3)ブタ体外成熟卵子への顕微授精(ICSI : Novel法)の確立と無血清限定培地を用いた体外培養によるブタ胚盤胞の作出,4)血清不含のガラス化液を用いたブタ未成熟卵子のガラス化法の検討し、以下の成果が得られた。 1)体外成熟用限定培地に100μM cysteamine(37%)または100μMβ-mercaptoethano1(27%)を添加することにより、ICSI後の胚盤胞率を無添加区(PVA区:16%)よりも有意に向上させ、かつ卵胞液添加区(31%)と同様の結果が得られた。 2)ブタの体外受精に卵子細胞質内精子注入(lntracytoplasmic sperm injection : ICSI),特にYongら(2003年)が開発したNovel法が有効であり、これまでのように通常の体外受精による高い多精子侵入率の危惧もなく、体外受精と差異のない胚発生率胚盤胞率(3、0%以上)が得られた。 3)ブタ未成熟卵子のガラス化に、30% ethylene glycol (EG)+0.5M sucrose液を用いたクライオトップ法で、加温後の体外成熟培養で37%の成熟率,およびICSI後の14%の胚盤胞率を得た。 4)ブタ未成熟卵子のガラス化において、加温後の卵子の正常形態率は、ガラス化平衡時間と卵丘細胞の有無に有意な相関関係が見られた。即ち、卵丘細胞が付着した卵子では4分の平衡時間が、卵丘細胞除去した卵子では、1分の平衡時間が有効であった。 5)微小環境下での培養系[The Well of the Well (WOW:直径1mmのホールに5個の卵子または胚を培養)]をブタ未成熟卵子の体外成熟培養および限定培地を用いた胚の体外培養において、WOWが有効である事を示した。 6)血清不含のガラス化溶液でガラス化され、加温後タンパク質不含の限定培地で体外成熟培養された卵子は低率であったが成熟する事が示された。今後さらに、血清不含のガラス化溶液の改善が必要である。
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