配分額 *注記 |
3,700千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 300千円)
2007年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2006年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2005年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
ブタ卵子の体外受精時には多精子侵入が高頻度で起こり,この多精子侵入を抑制する体外受精技術を確立することはブタにおける繁殖技術の発展にとって非常に重要である。そこで本研究では,まず初めに,受精に関わる精子側の要因として精子ヒアルロニダーゼ活性に着目し,タンニン関連化合物類から抗ヒアルロニダーゼ作用を有する物質を探索すると共に,これら抗ヒアルロニダーゼ物質がブタ体外受精時の多精子受精を抑制できるか否かを検討した。その結果,タンニン関連化合物類の内,タンニン酸とエラグ酸が濃度依存的に5μg/ml以上の濃度でブタ精子から粗抽出したヒアルロニダーゼ活性を顕著に阻害した。また,強い抗ヒアルロニダーゼ作用を有するタンニン酸とエラグ酸を体外受精培地に添加(5μg/ml)したところ,高い精子侵入率(70%以上)を維持した状態で多精子侵入が有意に抑制された(37%と19%)。そして,これら抗ヒアルロニダーゼ物質は透明帯との糖鎖結合により引き起こされる精子先体反応を抑制することが明らかとなった。そこで,卵活性化処理後の透明帯反応に伴った精子-透明帯間の糖鎖結合に関わるGlcNAcならびにGalNAc糖鎖末端の変化を追究した結果,透明帯硬化が開始する活性化処理4時間後にGalNAc糖鎖末端の変化が起こり,GlcNAc糖鎖末端の変化には活性化処理後18時間以上を必要とした。すなわち,ブタ卵子では活性化に伴い透明帯の硬化のみならず,精子との結合に関わる透明帯構成糖タンパク質の糖鎖末端も非常に遅い段階で変化していることが証明され,このことが高い多精子侵入率に関係していると考えられた。以上の結果から,精子-透明帯間の糖鎖結合で惹起される精子先体反応が体外受精時の多精子侵入に関与しており,抗ヒアルロニダーゼ物質はこの先体反応を抑制する作用を介して多精子侵入を効果的に抑制していると結論された。
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