研究概要 |
動物の急性期蛋白であるα_1酸性糖蛋白(AGP)の糖鎖変動の意義を解明し,各種疾病の病態把握,診断,予後判定に応用することを目的として追究し,以下の結果を得た. 1.動物AGPの分離精製:ネコの腹水を材料として,硫安沈殿,酸沈殿,イオン交換カラム法,ゲルろ過法を組み合わせてAGPを分離精製した。精製蛋白はSDS-PAGEでは分子量40〜50kDaに淡い染色性を示すbroadな蛋白バンドを示し,硫安・酸に対して高い可溶性を持ち,等電点3.7以下であることから,AGPであることが確認された。 2.モノクローナル抗体の作製:精製AGPをBalb/cマウスに免疫し,常法に従ってモノクローナル抗体を作成した.その結果,8クローンが得られ,そのアイソタイプは(L鎖)はIgG_1(λ鎖),IgG_<2b>(λ鎖),IgA(κ鎖)であった。Western blot解析では,還元状態ではAGPを認識せず,非還元状態のAGPを認識することから,立体構造を認識することが示唆された。また,競合ELISA法によるエピトープ解析の結果から,今回得られたMabは同一するエピトープを認識する可能性が示された。 3.lectin affinityによる糖鎖解析:Western blot法によるlectin affinityによるAGPの糖鎖解析の結果,ネコAGPはConA, DSA, SAA, UEA-1と結合したことから,精製画分には混合型2分岐グリカンあるいは3分岐以上のグリカンをもつもの,シアル酸とフコースが付加されているものが存在すると考えられた。 4.抗血清の作製と測定:精製AGPウサギに免疫し(て抗血清を作製した.Ouchterlony法では精製AGP、ネコ血清に対して連続した沈降線を形成し、ネコ血清中のAGPを認識することが判明した。血清AGP濃度を測定するため,direct binding ELISAを行ったところ,AGP濃度0.02-0.25μg/mlの範囲で測定可能であり、ネコ血清中AGPレベルは1.37±1.147mg/mlであった。
|