研究概要 |
人畜由来のエストラジオール(E2)、エストロン(E1)等は、汚水処理場等で塩素処理を受けると、塩素処理副生成物を生成すると考えられ、これらのエストロジェン作用を調べ、実際に環境中に存在するのかも調べた。 1.塩素処理副生成物の合成及び精製 E2、E1、エストリオール(E3)、エチニルエストラジオール(EE2)を臭化カリウム(KBr)存在下、非存在下で、次亜塩素酸ナトリウム処理をした。E1からは、2-Cl、4-Cl、2,4-diCl、2,4,16,16-tetraCl体、10-Cl-1,4-estradiene-3,17-dione(10-Cl-3,17-dione)が、KBr下では、2-Br、4-Br、2,4-diBr体が生成した。E2、E3、EE2からは、2-Cl、4-Cl、2,4-diCl、2-Br、4-Br、2,4-diBr体が生成した。 2.エストロジェン活性、細胞増殖活性 ヒト及びメダカのエストロジェン受容体を用いたyeasttwo-hybridassay、及び乳癌細胞MCF7のGFP発現システムにより、いずれの化合物も、4-Cl体は親物質と同等のエストロジェン活性があり、2-Cl、2,4-diCl体の順に活性が低下、10-Cl-3,17-dioneは、E1と同等で、tetraCIE1は活性が消失した。Br体ではさらに活性が消失した。MCF7の細胞増殖についても、同様であった。 3.下水処理場放流水中の塩素置換E1の検出 下水処理場放流水中に、2-ClE1、4-clE1、2,4-diClE1が検出された。 4.遺伝子発現レベルの解析 E2、E1の塩素処理副生成物について、E2制御のpS2とPgR、AhR制御のCyp1A1の発現レベルを、Real-time PCRにより解析した。PgRとpS2は、エストロジェン活性の強さに対応して、発現レベルが上昇し、Cyp1A1では低下した。
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