研究概要 |
不斉リン原子を有する光学活性ホスホノ酢酸エステル(P-キラルホスホノ酢酸エステル)の合成開発を目的とし、リン原子上に異なるアルコキシ基を有する様々なホスホノ酢酸エステル(ラセミ体)の簡便合成法を確立した。次に、ホスホノ酢酸エステル(ラセミ体)の酵素加水分解反応をブタ肝臓エステラーゼ(PLE)を用いて行った結果、数種の基質について実用的なE値(〜>37)が得られ、目的とする新規P-キラルホスホノ酢酸エステルの合成を達成した。なお、(-)-メントール由来の新規P-キラルホスホノ酢酸エステルと2-フェニル-1,3-ジオキサンー5-オンの不斉HWE反応では、軸性キラリティーを有するα,β-不飽和エステルが96%の収率、84%のジアステレオ過剰率で得られた。 一方、不斉HWE反応の生成物である軸性キラリティー化合物から中心性キラリティー化合物への新規不斉転位反応の開発を目指し、軸性キラリティー四置換オレフィン(α,β-不飽和エステル)の立体選択的合成、ならびにα,β-不飽和カルボン酸からβ,γ-不飽和エステルへの脱共役エステル化反応を検討した。その結果、スズ(II)トリフラート-N-エチルピペリジン条件下、安価で入手容易な不斉源であるイソマンニドのモノO-ベンジル誘導体を不斉補助基とするキラル2-メチル-2-ホスホノ酢酸エステルを用いた、4-置換シクロヘキサノンの不斉HWE反応により、目的とする軸性キラリティー四置換オレフィンの高ジアステレオ選択的合成(〜>99% de)を達成した。さらに、α,β-不飽和カルボン酸である2-シクロヘキシリデン酢酸とイソプロパノールのエステル化反応を、4-ピロリジノピリジン存在下、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いて行うと、二重結合の転位したβ,γ-不飽和エステルが高選択的に得られることを明らかにした。
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