研究概要 |
有用な生体機能物質の短行程合成を可能にする事を目的としてアミノ酸を保護することなく変換反応を行い、年度期間内に以下の成果を得た。1.無保護芳香族アミノ酸であるPhenylalanine(1),Tyrosine(2),Phenylglycine(3)を60-90%硫酸水溶液中で、Bromoisocyanuric Acid Sodium Saltをブロム化剤として反応を行い、1からは、オルト体とパラ体の混合物として合計収率94%で、2からは2当量の4を用いることで、ジブロム体が71%の収率で、さらに3からは、オルト、メタ、パラ体の混合物として78%の収率で得ることに成功した。この反応は、Br^+が存在する酸化的条件下でも、アミノ基を保護することなく、芳香環のブロム化に成功した点で、大変興味が持たれる。 2.我々の開発した生合成類似の経路によるトリプトファン合成法を利用して、今までに最も高いインドール2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害活性を有する化合物を合成に成功した。この化合物は、新しい作用機序による制ガン剤、アルツハイマー治療薬などになりうるため、昨年度特許出願した。 3.赤堀四郎等は、N-MethylalanineとBennzaldehydeを加熱することにより、直接エフェドリンが低収率で得られる反応を報告している。我々はこの反応を追試し、オキサゾリジンが中間体に生成していることを明らかにし、この中間体を取り出すことなく、One-potで加水分解することにより、エフェドリンの収率を大幅に向上させることに成功した。この反応は、アミノ酸の脱炭酸と同時に炭素-炭素結合が生成するというアミノ酸の新しい反応形式であるというばかりでなく、医薬品の基本骨格として多く含まれるアミノアルコール誘導体が、アミノ酸からわずか一行程で得られるという、有機合成的にも重要な反応である。
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