研究概要 |
滴定法は現在でも広く用いられている化学的分析法であるが,伝統的な手操作による滴定は煩雑で時間を要する上,多数あるいは微量の試料を取り扱うことは困難である。本研究では,研究代表者らが提案したflow ratiometryをフロー滴定へと応用した。 平成17年度では,装置の制御から計測・解析に至るまで,測定を完全自動化するためのプログラムを自作した。これによる可変三角波制御(当量点位置を判定するために用いる)および固定三角波制御(当量点を含むごく狭い領域で被滴定液/滴定液の流量比を連続走査するために用いる)に基づき,目的とする情報(当量点)の取得に必要のない無駄な領域での走査を避け,ハイスループット化を実現した。これを酸・塩基の電位差滴定および光度滴定(要,指示薬)に応用し,1分あたり最大34滴定という前例の見られない高い滴定効率を実現した。 この成果を基盤に平成18年度はキレート滴定への応用について検討した。光度検出器あるいは電位差検出器(カルシウムイオンセンサー)単独で用いたシステムでは,酸・塩基滴定と同様,優れた分析性能を発揮することができた。オンライン希釈により,試料濃度を自動的に変化させるシステムも構築した。また,データのオーバーフローを避け長時間の測定にも対応できるようプログラムをより進歩させた。終盤では,光度検出器と電位差検出器を直列に接続し,試料中のカルシウムイオンおよびマグネシウムイオンの同時測定について検討した。しかし,この同時測定に関しては,残念ながら真度および精度の両面において実用に耐えうる信頼性を得るには至っていない。さらに検討を加えたのち,論文公表を行いたいと考えている。
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