研究概要 |
向流クロマトグラフィー(CCC)用水性二相溶媒系を各種調製し,上層と下層の体積比,動粘度を測定しCCCに適用できるかを検討した.その結果,7.0-7.5%PEG 3350-10% dextran T40-10mMリン酸カリウム緩衝液(pH9)の系がCCCに適していた.この二相溶媒系の下層を固定相としてカラムへ充填し,上層を移動相とするCCCを行ってStreptococcus mutans菌に発現させたグルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を菌体破砕液から精製した. さらに,他の組換えタンパク質として,maltose binding protein (MBP)融合histone deacetylase (MBP-HDAC)はpMALc2を発現ベクターに用いれば大腸菌に大量発現させることができることがわかった. そこで,上記二相溶媒系の下層(dextran T40-rich)を固定相としてCCC装置のカラムへ充填し,カラムを400rpmで回転させながら上層(PEG 3350-rich)を移動相として,MBP-HDACを大量発現した大腸菌の細胞破砕液を溶離(0.25ml/min)した.その結果,32-53(3ml/each)画分には上層で溶出された3つのピークが確認できた.53画分が溶出した後,固定相に強く保持されている成分はdextran T40-richな固定相液体で溶出した.CCCは固定相も移動相も液体なのでカラムからの回収率は100%である.54-60画分まで分画した後,水性二相系を構成するPEGとdextranは限外ろ過で除去し,画分中のタンパク質をSDS-PAGEで確認した.その結果,上層で溶出された39-45画分中にはMBPタグが含まれていた.また,精製目的のHDACは固定相液体で溶出した55-60画分に単一バンドとして確認できた. 精製されたHDACは,CCC分離の際に,タグタンパク質(MBP)から消化されて結合が切断されたにもかかわらず,酵素活性を測定したところ,ヒストンの脱アセチル機能は保っていた.このように,大腸菌に大量発現させたMBP-HDACは水性二相溶媒系を用いるCCCで,細胞破砕液から一段階で精製できることがわかった.また,プロテアーゼ処理しなくても,CCC分離中にタグタンパク質から切断できることが確認された.
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