研究概要 |
昨年度および今年度と合成した4,4'-(1,4-Tetramethylenedicarbonyldiamine)bis(1-hexyl-pyridinium bromide)をリード化合物とする化合物中で,リンカー部位がthioetherタイプの化合物について,構造活性相関の詳細な検討を行った。その結果,1)pyridine環窒素における置換基が抗マテリア活性に大きく関与すること;2)この置換基が直鎖アルキルの場合は炭素数8の場合に最も高い活性を示すこと;3)この置換基がbenzyl基やcyclohexyl基のような嵩高い置換基の場合は活性が低下すること;4)2つのpyridine環を繋ぐリンカーに関して,炭素数3から10まで変化させたが,活性に対してそれほど大きな影響は及ぼさなかったこと等が判明した。 続いて,昨年度および今年度合成した化合物の中で最もin vitroで優れた抗マラリア活性を示した化合物に用いて,in vivoに於ける抗マラリア活性評価を行った。評価方法はマウスによる4 days suppressive testを用いた。その結果,15mg/kgの投与量においてED_<50>値(7.3mg/kg)は既存薬であるchloroquine(ED_<50>値;1.3mg/kg)に劣る(1/5〜1/6)ものの有効な活性を示した。'しかし,chloroquineが同投与量でマラリア感染マウスを完治させたのに対して,我々の化合物の場合は完治までには至らず,survival ratioは186%であった。そこでこの化合物の投与期間を延長したととろ,投与期間に比例してすべてのマウスの死亡するまでの日数が長くなり,明らがな延命率の改善が認められた。即ち,化合物投与期間中,顕著にマラリア原虫増殖抑制作用、(2%以下)が.認められたわけである。これらの結果から,本化合物は単独ではマラリア感染を完全には抑制できないものの,例えば,既存の抗マラリア薬との併用により、有効な化学療法を行なうことができるのではないかと考えられる。
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