研究課題
基盤研究(C)
【目的】ダイオキシン類の毒性の多くは、その特異的受容体で、構造内にbHLH/PASドメインを持つ転写因子であるAhレセプター(AhR)により媒介される。AhR並びにArntはヘテロダイマーを形成してダイオキシン類の毒性発現に関与する。我々はダイオキシン類が肺がん誘発作用を有すること、さらにはAhRが肺において高い発現を示すことに注目し、ヒト肺がん由来A549細胞におけるダイオキシン類の影響を検討した。その結果ダイオキシン類がAhR.依存的にA549細胞の増殖を促進すること、また、そのメカニズムとしてAhR/Arntが'発がん関連転写因子であるE2Fを活性化し、標的遺伝子である細胞増殖関連因子の発現を上昇させることを明らかにした。さらにAhR/ArntによるE2F活性化の機序を検討した。【方法】AhR/ArntあるいはE2Fの結合配列を含むリポーター遺伝子をそれらのsiRNAと共に細胞にトランスフェクションし、その活性を測定した。またAhR、Arnt並びにE2Fの欠失変異体発現ベクターを作製し細胞内に導入した。そのRNAi法による遺伝子発現抑制は、siRNA導入48時間後にWestern blot法により確認した。各タンパク質の相互作用は、免疫沈降法により解析した。【結果/考察】AhR、ArntあるいはE2Fの発現をRNAi法により抑制した結果、いずれの場合においてもE2F依存的転写活性は低下した。それに対して、AhR/ArntによるXRE配列での転写活性は、E2Fの発現抑制により充進した。またAhR、Arnt並びにE2F欠失変異体を用いてその相互作用を検討した結果、AhR、ArntではPASドメインが、E2Fではがん抑制因子であるRbタンパク質との結合部位が相互作用に必要であることが認められた。さらにAhR/ArntがE2Fと複合体を形成することが免疫沈降法により明らかとなった。これらの結果からAhR、Arnt並びにE2Fが複合体を形成し、この複合体はE2F結合配列に対しては促進的に作用し、その一方でXRE配列に対しては抑制的に作用することが示された。
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