研究概要 |
小腸や腎臓、肝臓などの上皮細胞では、血管側(側底膜)と管腔側(刷子縁膜)に機能特性の異なる有機イオントランスポータが局在し、薬物輸送の方向性(吸収・分泌)の決定に重要な役割を果たしている。しかし、これら有機イオントランスポータの細胞膜局在化機構については未だ不明な点が多い。これまでの知見より、oatpファミリーに属する有機アニオントランスポータ(OAT-K, oatp1)は、培養細胞または臓器特異的に異なる細胞膜へ選別輸送されることが示唆されていた。本研究ではその機構について明らかにするため、有機アニオントランスポータOAT-Kをモデル薬物トランスポータとして選択し、OAT-KのN末端側に蛍光蛋白質(EGFP)を融合させた発現ベクターを構築し、極性上皮細胞MDCKに安定発現させ、OAT-Kの細胞膜発現機構について詳細に検討を行った。その結果、OAT-Kはその生合成後の細胞膜輸送過程においてプロセシングを受け、C末端側小分子として細胞膜に発現すること、OAT-Kのプロセシングは小胞体において起こり、そのN末端側がプロテアソームによって速やかに分解されることを明らかにした。また、腎臓における発現が多いことが知られている側底膜型有機アニオントランスポータOAT1, OAT3の発現調節機構に関する検討を行い、OAT3のプロモーターにはcAMP応答配列が存在し、その発現は転写因子CREB-1とATF-1によって調節されていること、OAT1の発現は転写因子HNF-4αによって制御されていることを示した。さらに、刷子縁膜型有機カチオントランスポータMATE1, MATE2-Kのクローニングに成功し、その臓器分布や機能特性について明らかにした。今後、刷子縁膜型と側底膜型の有機イオントランスポータの比較解析を行い、これらトランスポータの細胞膜局在化機構についてより詳細な情報を得ていく予定である。
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