研究課題
基盤研究(C)
化学療法既治療肺癌症例におけるアムルビシン(AMR)の至適投与量の設定並びに体内動態特性の評価を目的として、第I相臨床薬理試験を行うとともに、in vitroの系においてAMRの細胞膜輸送におけるP-糖蛋白質(P-gp)の関与について検討した。1.AMRの血中濃度は二相性に下降し、短い分布相と長い消失相(消失半減期:6.2±2.0h)を示した。また、活性代謝物であるアムルビシノール(AMR-OH)は投与直後に最高血中濃度に達し、その後持続的に血中に認められた(消失半減期:16.2±4.6h)。AMRおよびAMR-OHの各血中濃度-時間曲線下面積(AUC)比から求めた変換率は15.1%であった。2.AMRのクリアランスにおいて大きな個体間変動が観察された(変動係数=49.8%)。一方、AMRのAUCとAMR-OHのAUCに強い相関関係が認められた(r=0.903)。3.AMRによる血液毒性とAMRおよびAMR-OHのAUCとの間に相関傾向が認められた。4.化学療法既治療症例を対象とした第I相試験の結果に基づき、AMRの至適投与量は35mg/m^2と推定された。用量制限因子は血小板減少、不整脈および好中球減少であった。5.AMR投与3時間後のAMRおよびAMR-OHの血中濃度とAUCとの間に良好な相関が認められた(AMR, r=0.917; AMR-OH, r=0.979)。6.AMR及びAMR-OHの細胞膜輸送にはP-gpが寄与していることを明らかにした。以上、本研究では化学療法既治療肺癌症例におけるAMRの至適投与量並びに体内動態特性を明らかにするとともに、AMRの体内動態並びに抗腫瘍効果の面において、P-gpが寄与していることを明らかにした。
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