腹膜は、腹壁の内張をしている壁側腹膜と、内臓を包む臓側腹膜に分けられるが、本研究では、壁側腹膜に分布する知覚神経終末について研究を行った。 雄のSD系ラットを用い、麻酔下に腹壁を切り出し、浸漬固定を行った後、壁側腹膜を腹壁からはがし、伸展標本とした。これを神経のマーカーである抗PGP9.5抗体による免疫組織化学で染色した。これをSpurr樹脂に平板包埋し、光学顕微鏡で観察して、神経組織がある部分を超薄切片とし、電子顕微鏡で観察した。 腹膜直下を走る神経線維束が観察された。有髄線維と無髄線維の両方が一つの線維束の中に観察された。腹膜は、一層の腹膜細胞が膠原線維の中にシート状に配列しているが、神経線維束はこの膠原線維中を走っているのが認められた。この線維束から一本の神経線維が分かれ、グリア細胞に包まれて腹膜表面に向かい、ここで髄鞘から出て数本の無髄線維となり、腹膜表面に達している象が観察された。 腹膜に知覚神経が分布していることは、生理学的には知られているが、その形態についての研究は我々が2002年にAnatomy and Embryology誌に発表した、どこの神経節から神経が来ているかを調べた 論文が唯一である。今回の研究で、初めてその終末の形態を報告できた。知覚神経は腹膜直下を線維束を作って走り、ここから短い枝を出し、腹腔に達する直前に髄鞘から出て枝分かれをしていた。この線維を数個の細胞が保持し、包んでいたが、これはシュワン細胞に近い性質を持つ神経膠細胞であろう。
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