研究課題
基盤研究(C)
本研究でMRPIのC末端側の17番目の膜貫通部位の近傍の細胞質内部分のトリプシンによる限定分解がグルタチオン(GSH)の存在下では抑制されることを見出した。さらにGSHとAG-Aあるいはビンクリスチンの共存では、切断はさらに強く抑制された。この現象にL_0/ICL3部位が必要であった。これらのことからGSHはL_0/ICL3と反応性があること、GSHがC末端側の立体構造の変化を誘導する可能性を示した。また、ICL5とICL7のグルタミン酸(507番目と1157番目)とグリシン(511番目と1161番目)がよく保存されていることを見出し、この配列について変異体を作成した。それぞれの変異体とも大きな立体構造変化を伴わないが、LTC4の輸送活性がなく、さらにazidoAG-Aでの光親和性標識のGSH依存的な増強が消失していた。変異体MRPのATP反応性を調べると、ICL5変異体はNBDIのATP結合性は保たれていたが、NBD2の結合性は消失していた。ICL7変異体では両方のNBDの結合性が消失していた。また、バナデートトラップ法によってNBDのATPase活性を調べると、いずれの変異体でも両方のNBDとも活性を消失していることが分かった。これらの結果はICL5、ICL7のこれらの部位がMRP1のGSHの認識、ATPの結合性、ATPase活性に関連していることを強く示唆している。一方、これまでGSHに依存せずにMRPIで運ばれる基質についていくつかの報告があったが、その実態は不明であった。本研究でLTC4を輸送できないL_0/ICL3の変異体がSN-38を輸送できることを明らかにした。この結果は、GSHに依存的な輸送系と非依存的な輸送系には薬剤認識に構造的な差があることを示唆している。さらに、GSHに依存しないで輸送できる分子をその化学構造の分類から予測できる可能性を見出した。
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