研究課題
基盤研究(C)
腫瘍細胞が腫瘤を作らず体腔液中で増える特徴をもつ原発性体腔内リンパ腫(PEL)患者から樹立した2種類の細胞株において、特徴的な1q染色体断片の挿入を認めた。両腫瘍細胞株DNAと正常細胞DNAを用いたCGH法による解析から1q増幅領域はOS-1株では1q21-q32.1、PSu株では1q25-q32.1と推定された。この時点で共通増幅領域は1q25-q32.1領域と予測したが、共通増幅領域と推定された範囲内を詳しく同定するために1q21-q32領域の約55Mbにわたる10種類のBACクローンを用いてFISH解析を施行した結果、OS-1株はA-B-C-B-Aタイプ(1q21→1q31←1q21)の、PSu株はC-B-A-B-C(1q32←1q31→1q32)タイプの重複ユニットを持ち、両株とも1q31.3-q32.1領域を起点とする重複ユニットから構成されていることが明らかになった。さらに、PSu株では1q31.3(最新のNCBIのMap Viewerのデータでは1q32.1)にマップされるBACクローンRP11-472J21が3コピー以上挿入1q染色体断片上で増幅していることもわかった。この領域の増幅や1qトリソミーはAMLやCMLなど種々の血液系腫瘍や固形腫瘍においても報告されており、この領域に腫瘍特異的遺伝子変化が起こった結果、浮遊性の癌細胞になったと考えられる。PEL両株における1q増幅が共通メ力ニズムに基づいている可能性を考えて、1q31.3-q32.1領域の重複複製起点を同定するためにより狭い領域の最新データに基づいた詳細なBACクローンFISH解析とゲノム構造解析を進めているが、平成17年度から平成18年度の研究期間内に切断点に位置するゲノム断片の同定に至ることはできなかった。今後、BACクローン472J21に注目して重複複製起点を含む前後の塩基配列を狭めて同定し、起点周辺の重複構造や塩基配列の特徴を明らかにしたい。その中に特徴的な配列を見いだし浮遊系と接着系の癌細胞を含む各種の培養細胞に導入して発現させることを計画している。発現細胞においてアンプリコンユニットの動態をファイバーFISH法により観察する細胞遺伝学的なアプローチから、遺伝子増幅様式や増幅ユニット維持メ力ニズムを解明できるのではないかと期待している。また、各種の発現細胞のパターンを解析することから、細胞生物学的に、浮遊して増殖する病因メ力ニズムに迫りたい。
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