研究概要 |
肝内胆管および細胆管の構造変化の解析は様々な肝障害の組織診断に有用であるが,肝移植後の組織診断への応用に関する研究は少ない。我々は肝移植後のグラフト肝に細胆管病変を起こしうる種々の疾患について,定性的・定量的な細胆管の評価法を検討すると共に,細胆管病変を来す疾患の診断に有用な免疫組織学的マーカーについて検討を行ってきた。研究実績の概要は以下の3点である。 1.C型肝硬変に対する肝移植後に高度胆汁うっ滞を来す症例の検討 C型肝炎ウイルス陽性例に対する肝移植では移植後の再感染は必発であり,ときに胆汁うっ滞性肝炎を来す。胆汁うっ滞性肝炎は臨床的にしばしば高度の拒絶反応との鑑別が困難である。我々は肝炎再発において細胆管の変化の有用性を検討した。Cytokeratin-7免疫染色による細胆管の形態の評価は敗血症や拒絶反応との鑑別に有用であった。 2.肝移植後の免疫抑制離脱における細胆管の変化の解析 小児においては生体肝移植後に免疫抑制剤を漸減してもグラフト肝障害を来さず,最終的に免疫抑制剤から離脱できる症例がある。免疫抑制剤離脱症例の一部では,慢性拒絶反応の基準を満たさないが,定量的解析により軽度の小葉間胆管萎縮と細胆管増生が見られることが明らかとなった。 3.液性拒絶反応におけるC4d免疫染色の意義の検討 ABO血液型不適合やリンパ球クロスマッチ陽性の肝移植後に見られる液性拒絶反応は組織学的に敗血症性胆管炎や硬化性胆管炎と類似の細胆管変化を来し,しばしば重篤な肝障害を引き起こす。我々は補体分解産物C4dの免疫染色が液性拒絶反応の診断に有用であることを見いだした。
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