研究概要 |
肝細胞の毛細胆管をシールしているタイト結合は、有毒な胆汁が胆道から大循環に漏出し黄疸が発症するのを防いでいる血液胆汁関門(blood-biliary barrier)を形成している。肝臓には、膜貫通タイト結合蛋白であるclaudin(CL)-1,-2,-3,-5,-14の発現がみられ、CL-1,-3は肝小葉内全体に発現しているのに対して、CL-2は小葉中心性に局在が認められる。また、CL-2は、陽イオン選択的透過性機能を有すると報告されているが、肝細胞においては、その生理的機能・発現調節に関しては未だ不明である。今回我々は,肝細胞におけるCL-2の役割の解析を目的として、まずIL-6 familyに属する多機能性のサイトカインであり、肝細胞の成熟・肝組織再生に重要な役割を果たすoncostatinM(OSM)を処置したマウス肝細胞株および初代培養ラット肝細胞におけるCL-2の発現およびその機能変化について検索した。さらに、肝細胞極性を有するWIF-B9肝細胞株を用いて、CL-2の毛細胆管形成への関与をRNAiを処置して検索した。結果、OSMによりマウスおよびラット肝細胞のCL-2の発現誘導がmRNAレベルからみられ、著しいタイト結合構造の変化を伴い、分子量依存性のバリア機能を亢進させた。さらに、OSMによるCL-2の発現調節は、PKC経路を含んだ様々なシグナル伝達を介して行われていた。WIF-B9肝細胞株においては、in vitroで毛細胆管の増加および拡張を誘導するphenobarbital処置により、CL-2の発現増加がみられた。さらに、RNAi処置によるCL-2の発現低下により、その毛細胆管形成が抑制された。以上の結果は、CL-2は、肝細胞において毛細胆管のシール機能だけでなく毛細胆管形成にも重要な役割を果たしていると考えられた。
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