研究概要 |
胃MALTリンパ腫を慢性炎症関連群と非関連群に分類し,免疫グロブリンVH遺伝子を解析したところ,前者ではVH23,VH30が多くの症例で選択されていたが,後者では特徴的なVH遺伝子は認められなかった.この結果はそれぞれの群が異なるB細胞から発生すること,そして前者から後者への移行が稀であることを示唆している(Mod Pathol 2007).胸腺MALTリンパ腫は自己免疫疾患と特に関連が深い腫瘍である.この腫瘍においてVH遺伝子を解析したところ,胃MALTリンパ腫慢性炎症関連群と同様,VH23,VH30が多くの症例で選択されていた(J Pathol 2006).これらの結果から,慢性炎症と関連が深いMALTリンパ腫は特徴的なVH遺伝子を選択しており,慢性炎症関連群と非関連群は分子生物学的にも異なる腫瘍群であることが示された.p16遺伝子不活化はリンパ腫進展に関与すると考えられている.肺MALTリンパ腫において解析したところ,腫瘍診断時,すでに多数の腫瘍でp16遺伝子が不活化しており,API2-MALT1キメラ遺伝子や臨床病理学的因子との関運も認めなかった.以上より肺MALTリンパ腫ではp16遺伝子不活化は鵬進展より腫瘍発生に関与していることが示唆された(Mod Pathol 2005).肺MALTリンパ腫ではAPI2-MALT1キメラ遺伝子陽性率が50%以上と特に高い.細胞診標本を用いたキメラ遺伝子検出(multiplex RT-PCR法)について検討したところ,BAL,痰,胸水などの検体を用いて高精度にキメラ遺伝子が検出可能であり,遺伝子診断として有用であると考えられた(Int J Hematol 2005).このほか,MALTリンパ腫の遺伝子異常とその臨床病理学的意義について総説を発表した(Pathol Int In press).また自然寛解を示した口腔MALTリンパ腫の一例(Pathol Int 2006),胃MALTリンパ腫除菌治療後に大細胞性リンパ腫の発生を認めた症例(Am J Gastroenterol 2006)を報告した.
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