研究概要 |
・胃癌にて切除された胃全摘出検体100例について5mm幅の全割標本を作製し、顕微鏡的GISTの真の発生頻度について検討を行ったところ、KITないしCD34陽性を示す顕微鏡的GISTを35症例50病変見出した。また、遺伝子増幅可能であった顕微鏡的GIST25例についてc-kit遺伝子exon11の変異解析を行ったところ、2例に臨床的GISTでしばしば報告されている領域の遺伝子変異(V559D, del557-561)を認めた。以上の結果から、我々が見出した顕微鏡的GISTは臨床的GISTの初期病変と考えられた。しかし、一般的に臨床的GISTの発生頻度は10万人に1-2人とされており、これと比較して本研究で見出した顕微鏡的GISTの発生頻度はきわめて高い。顕微鏡的GISTのごく一部のみが臨床的GISTに進展するものと考えられるが、それには、c-kit遺伝子変異に加えて、他の遺伝子変化が不可欠であると考えられた。 ・GIST35例について、9種類の癌関連CpG領域(p15, p16, p73, MGMT, E-cadherin, hMLH1, MINT(methylatedintumors)1, MINT2, MINT31)の異常メチル化の検討を、Methylation specific PCRで行った。c-kit遺伝子変異例25例では平均28.4%、PDGFRα遺伝子変異例7例では平均25.4%に異常メチル化が認められた。遺伝子変異のない症例3例では5領域に平均37.0%の異常メチル化を認め、変異有症例に比べて高率な傾向を認めた。また、遺伝子変異のない症例ではいずれも3領域異常に異常メチル化を認め、他の遺伝子変化の存在が考えられた。CpG領域別では、ミスマッチ修復遺伝子であるhMLH1で60%と最も高率に異常メチル化を認めた。これらの異常が遺伝子不安定性に関与し、GISTの発生、悪性化に関与しているものと考えられる。今後、異常メチル化をターゲットにした治療薬がGISTの治療にも有効である可能性が示唆された。
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