研究課題
基盤研究(C)
自己免疫性糸球体腎炎や難治性血管炎を含む膠原病疾患群は、その背景に宿主免疫異常の存在が示唆され、ゲノム解析の進歩により、種々の疾患感受性を規定する候補遺伝子も同定されつつある。我々は、免疫異常を誘導するlpr遺伝子(Fas抗原の欠損ミュータント)をもち、糸球体腎炎、全身性肉芽腫性動脈炎をはじめとする多彩な膠原病疾患群を自然発症するMRL/Mp-Fas^<lpr/lpr>マウスを用い、膠原病疾患群の発症機序の解析を行ってきた。その中で自己免疫性糸球体腎炎の疾患感受性を規定する候補遺伝子として同定され、構造遺伝子多型に基づく蛋白多型を持つ因子、オステオポンチン(Opn)に関し、コムギ胚芽を用いた無細胞蛋白合成システムにより多型蛋白を合成し、それぞれの蛋白の構造・機能に差異があることを明らかにしてきた。一方で、生体においては、Opnの発現量に疾患好発系と嫌発系のマウス間で差異があることも示唆されており、Opnの質的形質差異と量的形質差異のいずれが、疾患発症機序により強く影響しているのかを明らかにするため、a)合成蛋白を用いた各alleleのOpnの結合能の解析、b)Opn遺伝子座特異的コンジェニックマウスを用いた発現解析、c)そして、Opn遺伝子座特異的コンジェニックマウスを用いた疾患感受性およびフェノタイプの詳細な解析を行った。その結果、オステオポンチンの多型部位のうち、この分子の主結合部位の一つRGDSモチーフ近傍にある一カ所のアミノ酸多型がマクロファージとの結合能の差異を規定していることを明らかにした。さらに、Opn遺伝子座特異的コンジェニックマウスを確立し、Opn alleleが糸球体腎炎発症率・重症度、生存率を規定すると共に、Opnの発現量も規定していることを明らかにした。また、その差異に少なくともTh1/Th2バランスが関与していることを明らかにした。
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