研究課題
基盤研究(C)
ファンシダールに耐性を示す熱帯熱マラリア原虫の蔓延は、世界的な問題となっている。葉酸拮抗薬であるファンシダールでは原虫dhfr(dihydrofolate reductase)、およびdhps(dihydropteroate synthase)遺伝子のSNPsが、耐性能獲得に大きく関与している,本研究では、耐性原虫分布に影響を与える疫学因子や薬剤圧レベルの異なるいくつかのフィールドから得られた原虫耐性遣伝子周囲に存在するマイクロサテライト多型解析を行った.その目的は、「pyrimethamine耐性原虫がいつ頃出現し、どのような時間的、空間的な広がりを持って定着したのか」についての解明を試みることであり、3年間で以下の成果をあげることができた.1、pyrimethamine中から高度耐性を示すdhfr triple mutant原虫はメラネシアを除く全流行地に分布している.2、従来dhfr triple mutant原虫は東南アジアおよび南米起源とされていたが、ケニア、ガーナにおいて独立起源が起こっている.3、pyrimethamine中度耐性を示すdhfr double mutant原虫はアフリカではmultiple originsであり、東南アジア、メラネシアではsingle originである.4、メラネシアには独立起源および東南アジアから拡散したdhfr double mutant原虫が存在するが、これらの出現はほぼ同時期と考えられる.5、pyrimethamine低度耐性を示すdhfr single mutant原虫はどの地域においてもmultiple originsである.6、ファンシダール+クロロキンとの併用療法を用いてもファンシダール耐性原虫は急速に拡散した.マラリア治療戦略上最も難渋する問題は薬剤耐性原虫の蔓延である.従来、耐性原虫の疫学的評価は、流行地の臨床報告や薬剤耐性試験、耐性遺伝子変異の分析をもとに行われてきたが、現状の解析に留まり、耐性出現の予測までは至らなかった.本研究で得られた知見は、耐性原虫の進化・拡散について大きな学問的前進をもたらしたと考えている.今後、マラリア流行度や薬剤圧の程度、耐性原虫拡散ルートなど異なったフィールドにおける原虫集団の耐性遺伝子構成に対して、同様の集団遺伝学的解析を試みることにより、耐性出現および拡散スピードの予測といった対策への応用が期待されると自負している.
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