研究課題
基盤研究(C)
核でゲノムの複製を行うウイルスにとって、核内へのゲノム導入は感染の成立に不可欠である。この過程では、ウイルスカプシド構造のダイナミックな構造変化そして解体(脱殻)が、核内への効率的なウイルスゲノム導入と密接に関連していると考えられる。本研究では、ポリオーマウイルスの一種であるSV40をモデルとして用い、ウイルスの核内移行に伴う脱殻の役割を解析するために必要な各種変異株の作成・解析を行った。SV40のカプシドは外殻を形成するVp1とその内部に存在するVp2,Vp3(Vp2/3)で構成される。脱殻はVp1とVp2/3との結合を制御することで発生すると考え、Vp2/3を持たない変異粒子を二種類作成しその解析を行った。これらの変異粒子は野生型粒子と同様にVp1の外殻をもちDNAを包含するが、細胞内では核内移行に至る前に解体し、感染できなかった。さらに、SV40の結晶構造モデルをもとに、脱殻阻害を目的としてカプシドタンパク質間の相互作用の強化を意図した変異を導入した変異株(Vp3 Q174D, Vp1 E159C-Q174C, Vp1 V230C-Vp3 E257C)、または1970年代の研究から温度感受性的に‘脱殻阻害‘がみられるカプシドタンパク質の変異を同定し、これら変異を組み合わせた変異株(Vp3 P108S-M110I-Q113K)を作成し、それらの感染性を解析した。これらの中でVp1-Vp2/3のイオン性結合を強化する目的で変異を導入した変異株(Vp3 Q174D)は、粒子の形成およびその細胞内進入・核内輸送機構との相互作用は野生型と変わらなかったが、ウイルス遺伝子発現の開始が阻害されていた。この結果は、Vp1とVp2/3との相互作用の制御は、ウイルスと核内輸送機構との相互作用以降の段階で重要であり、脱殻あるいは大きな粒子構造変化がこの段階以降に発生することを示唆している。
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